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西邑 由記子さん

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「心の様子」に敏感になって はつらつと過ごしましょうと提唱。
ご自身が元気の見本のような 石井 苗子さん

女優として、カウンセラーとして、輝き続ける石井苗子さん。8年間の勉強とご自身の体験がもうすぐ実を結びつつあると笑顔がこぼれます。今は、さらに新しい夢に向かって走り出しているそうです。
撮影協力/ネクサスコート本郷(文京区)

 「私は一生目標や夢を持ち続けると思います」と、なんともパワフルなのは、本誌の連載でもおなじみの石井苗子さん。多忙な日々を送っていらっしゃる石井さんに、元気の秘訣や心の健康について語っていただきました。

 私は、18歳の頃、アメリカの牧師宅にホームステイしていました。その牧師は、ボランティアでカウンセラーもしていた方なんです。彼の教えは私の中に大きく息づいています。また、帰国して日本の大学で8年間勉強したこと、そして現在、心療内科のカウンセリングの見習いをさせていただいているのですが、それらが集大成として、実を結びつつあります。女優の仕事とカウンセリングの世界、この両方を満喫できるまで、もう一歩というところまで来ました。今は人生の最終玄関の入り口に立ったかなという感じですね。

黙って話を聞くことで
人の心がほぐれてゆく

 傾聴(けいちょう)という言葉があるんですが、黙って話を聞くことの大事さも実感しますね。私がカウンセラーとしての見習いをさせていただいている心療内科の先生に最初に求められたのが、「石井さん、しゃべらないで下さい」ということでした(笑)。
  それから、「患者様について、気になったことがあったら何でも教えてあげるから、患者様がお帰りになってから聞きなさい。また、患者様がお出になるまで立たないように。早く帰れといわれているように思われてしまうでしょう」とも言われました。

 

 先生はとても忙しい方で、数本の電話が同時に鳴ることも多いのです。そういうときは、患者様と私の2人きりになってしまうんですね。そこで泣いたりする方や、「よそでは言えなかったんですけどね」と怒りを打ち明けてくる方もいらっしゃるんです。でも、私はそれに対してうなづくことしか許されていないんです。
  最初はすごくつらかったんですよ。何もしゃべらないのでバカかと思われやしないかと。でも、そこで黙っていると、患者様の気持ちも落ち着くようです。沈黙は金とはこういうことなんだなと気がつきましたね。黙ってうなづくだけでいいんです。最近は先生にほめられるんですよ。
  「石井さん、いいですよ。岩にしみいる人の声、ですね」って(笑)。
  今は個性ではなく、個人の時代なんですね。皆さんがどういうご希望をお持ちなのかということをよく聞くことが重要という意味でも、傾聴の時代だと思いますね。

「風邪は万病の元」と言うように
心の不調にも敏感になって

 心の様子には敏感になっていただきたいと思います。人は何かが引き金になって心のバランスを崩すんです。それぞれ気にかかることが違う、ということを知ってほしいですね。明るい人、暗い人なんていないんです。電気のワット数ではないんですから(笑)。
  だからこう思っていただきたいんです。風邪は万病の元と言いますが、心の問題も放っておくのはよくないんですよ。風邪の場合はひき始めに頭が痛くなる、のどが痛くなるなど兆候は人それぞれです。風邪のときはどうしたらいいかという対処にも慣れていますよね。それと同様に、心のバランスの保ち方と、ちょっとおかしいなと思ったときの対応策を自分で知っておいた方がいいと思いますね。

  また、周りの誰かの心が疲れている様子だったら、たとえば、「2、3日休んでいた方がいいわよ」と声をかけてあげるのもいいでしょう。治療や通院についても、「心療内科のお医者さんやカウンセラーもいるし。早めにコントロールした方がいいわよ」と気軽に勧められる環境が理想です。親戚の人や家族や友達が、あらゆることを心理のプロと同じように話せるわけがないんですから。
  本来、心は快適なのが、通常のことなんです。でも、社会がちゃんとそれを知っていてくれないと、世の中は変わりません。自殺で3万人亡くなってしまう方がいるとしたら、統計的には30万人の未遂者と300万人の願望者がいることになるんですね。これを減らすには、心に対する社会の状態が良くなることが必要だし、一人ひとりの意識がしっかりと心の健康を目指していないとだめなんです。自分の心の管理に対して、アレルギー的な拒否反応を出さない方がいいですね。
  日本は、心のつらさや弱音を吐きにくい国ですね。とかく、情けないとか、気合いが入ってない、根性がないといった言葉で片付けられ過ぎています。
  また、介護の現場でも、心の健康をもっと考えたいものです。今は高齢化社会で、介護をする方もたくさんいらっしゃるでしょう。育児も介護も同じなのに、なぜ介護は虚しいのかという理由を、「そこに喜びを見つけてないから」と言う方もいらっしゃいます。でも育児は、人のお世話をするという意味では同じなのに、明るい感じですよね。なぜなら、「それは自分のお陰よ」と思えることに喜びがあるからなんです。自分が世話をしたから、と言っても、その子供への愛の深さに聞こえますよね。植物も同じで、私が水をあげたからこんなに育ったのよ、というのがうれしいのです。
  臨床心理学で、セルフ・エフィカシーという言葉があります。自分で自分がどれだけ素晴らしいかとほめることです。昨日できなかったことが、今日は少しできた。なんとなくいい気分だな。そういう自分の気持ちを大事にして過ごしなさい、というわけです。自画自賛していいんですよ。
  介護をするというのは、皆から脱帽されるべき、大切な、素晴らしいことなんです。ですから介護している人同士で、「大変ねえ」と言いながらお互い気落ちしてしまうような会話ではなく、「すごいわねぇ」「すごいでしょ」という会話をしたいですね。
  私自身は、26歳で両親を病気で亡くしたんです。介護をしていた頃は、病院から女優の仕事場に通っていました。仕事が夜遅く終わると局が車を出してくださるんですが、「病院まで」と言うと驚かれましたよ(笑)。病院に寝泊まりのわりには、ぐっすりと眠っていましたね。朝、看護婦さんに「あら、いたの」と驚かれるほどスヤスヤと(笑)。

 親孝行とは、体裁を整えたりするような、おおげさなものを言うのではないと思うんです。たとえば、1週間に1度、コンビニでジュース1本でも買って「どお?」と顔を見に行くだけでもいいんですよ。「行こうと思っていたのよね」というのは、恥ずかしいからあまり言わないようにした方がいいですね。忙しいからできない、のではなく、忙しい中で親孝行するんです。

 

 今の日本には、メンタルのケアをする専門家がいないんです。精神科医は、たくさんいらっしゃいますよ。でも、カウンセリングという分野は、欧米から30年は遅れているんです。
  この間も、ある会社で『メンタルケアはどなたがしていらっしゃるのですか』と聞いたら、その答えが「人事部がやってます」だったんです。悩みや精神的なことを人事部に行って、誰が対応できるのでしょうか。人事部は、人選や昇格などの仕事をするところですよね。
  また、この間は、「足がずっと痛い」と上司に相談したところ祈祷師を紹介されたという方がいらっしゃいました。お祓いみたいなことをされ、「難しい病気がある」などと言われたそうです。それを聞いてもっと具合が悪くなり、うちの診療所に駆け込んできたわけです。自律神経がやわらぐ薬をお出ししたところ、2週間たったらすっかり良くなってしまいました。精神的にもかなり楽になったということでした。会社がこんな調子では、鬱病が増えてしまいます。会社にも、ぜひメンタルケアの専門家を置いてほしいと願います。

 

  知名度は低いのですが、『健康日本21』という政策があるんです。国民の健康に関する目標や趣旨などが発表されたり、地域における運動の推進を行ったりするものです。ここでは、5年ごとに予測をたてることになっています。アメリカの予測では、5年後は国全体がよくなっているんです。ところが日本は5年後の予測が全部悪化。そんな報告書は見たくありません。そういう面からも、メンタルケアができるプロを雇ったほうがいい時代になってきたと強く感じますね。
  今は、さまざまな大学に設置された予防保健学科で、鬱(うつ)病予防が研究されています。あちこちの地方自治体でも、健康診断の充実も図ろうという動きが出てきています。こうしたこともあるので、地域においても、しっかりした人材確保が大事ですね。ここ20年を日本がどう乗りきるかが勝負だと思います。
  また、どんなことでも、早期発見、早期治療がとても大事です。今お持ちの機能、専門用語では、残存機能というのですが、これをどう大切にメンテナンスしていくかというのが大事です。痛みや苦しみ、悩みは、必要以上に人を老けさせるんです。痛みや苦しみがあると、連鎖反応で、どんどん悪くなるんです。痛いから悩む、悩むから痛いといったふうに、元々の何倍にもふくらんでしまいます。本来ならば、現在の年齢だったらもう少し、はつらつとしていていいはずの方がたくさんいらっしゃいます。悩みや苦しみをできるだけ早くなくし、年齢相応のすこやかさを持っていただきたいものです。女性も燃え尽き症候群から脱け出して、はつらつと過ごしましょう。


何歳になっても夢や目標を
持ち続けていたい

 心理関係の勉強も最終段階にきましたが、まだまだ新しい夢があります。今かないかけている夢は、カフェの運営です。新宿区と新宿モア4番街の共催で12月まで実施されるオープンカフェ通りでカフェを開けそうなんです。
  6年ぐらい前、スイスでアンチエイジング治療をしているクリニックに行ったんですよ。そこで出している食事を日本で出せる許可をもらったんですが、なかなかいい場所が見つからなかったんです。そこへ、テスト的にやってみませんか、と声がかかりました。新宿区は「健康」を区のテーマにしたいそうなんです。『二日酔いがなおるスープ』『脂肪が燃焼するスープ』『肌がきれいになるコラーゲンのスープ』健康にいい、この3種類のスープを提供すると同時に、健康志向のパンを取り寄せる予定です。カフェでくつろぎながら飲食することもできるし、テイクアウトして歩きながらでも気軽に食べられる、そんなカフェの完成を目指しています。また新しい夢がかないそうといったところですね。
  でも、私は何歳になっても夢や目標を持っていると思うし、そうありたいです。友達にも「60歳になっても同じことを言ってるんじゃないの」と言われます(笑)。

 

石井 苗子(いしい・みつこ)
女優/キャスター

profile
高校卒業後単身渡米。ワシントン州シアトル近郊のル−テル教会牧師宅に住み込みボランティア活動をしながらワシントン州立大学で学ぶ。帰国後、上智大学に編入。卒業後、水産庁の外郭団体に在籍し、日米漁業交渉団の同時通訳として働く。その後、テレビドラマの役者や、ニュースのコメンテーターなどで活躍。聖路加看護大学に学士入学し看護学を専攻後、東京大学大学院に進学し現在、医学系研究科健康科学 生物統計学/疫学・予防保険学博士課程に在籍中。4月より都内病院心療内科にてストレスカウンセラーの見習い中。11月公開の映画「手紙」(原作:東野圭吾、監督:生野慈朗)に出演。
http://www.ishiimitsuko.com

 
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